ヒトタンパク質発現リソース 成果普及

ヒトタンパク質発現リソース

ヒトタンパク質発現リソースとiPS細胞誘導遺伝子Glis1

 NEDO委託事業 「タンパク質機能解析・活用プロジェクト(平成12年度~17年度)」において、ヒト完全長cDNAを基盤としたヒトタンパク質発現リソースを構築しました(ヒト完全長cDNAクローンのGateway化)。このリソースには、世界最高の数と質を誇る約6万5千クローンを収納し、ヒト遺伝子の約80%をカバーしています。
 NEDO委託事業「iPS細胞等幹細胞産業応用促進基盤技術開発」では、このヒトタンパク質発現リソースを用いて、京都大学・山中教授のグループと連携して山中4因子と呼ばれるOct3/4, Sox2, Klf4, c-Mycを相補する新規遺伝子の探索を進め、安全かつ効率的な新規iPS細胞誘導遺伝子Glis1を発見しました。

 ヒトタンパク質発現リソースから選出した1,437個の転写因子を用いて、Klf4の代替因子として18因子を同定しました。その18因子の1つである転写因子Glis1を、発ガンの危険性があるc-Mycを除いた 3因子(Oct3/4, Sox2, Klf4)と一緒に、マウスやヒトの線維芽細胞に導入すると、従来の方法に比較して非常に効率よくiPS細胞を作製できることが明らかになりました。更に、Glis1が初期化を促進する機構を詳細に検討したところ、Glis1は初期化が不完全な細胞の増殖を抑制し、完全に初期化した細胞のみ増殖させることがわかりました(Nature ,9 June,2011)。
 京都大学・山中教授は、新規iPS細胞誘導遺伝子Glis1を「魔法の遺伝子」と呼び、これにより、臨床応用に使用可能なiPS細胞作製方法の確立に大きく貢献することが期待されます。

 コムギ胚芽無細胞系によるハイスループットのタンパク質合成システムも合わせて開発し、ヒトタンパク質発現リソースから2万種類のタンパク質を1週間の短期間で作製することが可能です。また、ヒト遺伝子・タンパク質データベースHGPD (Human Gene and Protein Database ) が整備されており、このリソースに含まれるGatewayクローンの詳細情報、及びそのクローンからのタンパク質発現データを検索することができます。
 これらのクローンは、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 生物遺伝資源部門(NBRC) から配布されています。

 ヒトタンパク質発現リソースを活用した研究として、iPS細胞誘導因子探索の他に、分化誘導因子等の探索、蛍光タンパク質を用いたインビトロ・メモリーダイ法による化合物スクリーニング、プロテイン・アクティブアレイによる血清中の自己抗体解析、標準タンパク質を用いた定量プロテオミクス解析にも利用されており、タンパク質機能解析の基礎研究から創薬探索、再生医療の応用研究まで幅広く利用することが可能です。